水素の意義とビジョン

水素の意義

なぜ、いまこそ「水素」なのか。
水素で未来がどう変わるのか

日本で大きく使われ始めた水素エネルギー。それが普及するとどんな未来が待っているのでしょうか。省エネルギー、エネルギー供給安定性の向上、環境負荷低減、産業振興・地域活性化など、未来に繋がる水素の利点をご紹介します。

1. 省エネルギー

地球規模では、人口増加や経済成長で人々の使用するエネルギーは年々増加する一方です。日本の中でも少しでも効率のよいエネルギーの利用が求められます。水素から電気を取り出すことができる燃料電池という電気化学装置は、高効率であり大幅な省エネルギーにつながります。

燃料電池の発電効率は火力発電より優れており、発電所の発電効率が35%であるのに対して、燃料電池は40%です。また同時に温水も利用すれば総合エネルギーは80%になります。家庭用コージェネレーションとして広く普及しているエネファームはこの燃料電池の特徴を利用したもので、光熱費を削減することが可能です。経済産業省は2030年にエネファーム530万台の普及という目標を掲げていますが、これが達成されると家庭部門におけるエネルギー消費量を約3%削減できると試算されます。
燃料電池自動車(FCV)も、ガソリン自動車より効率がよいため、省エネになります。FCVのエネルギー効率はガソリン内燃機関自動車の2倍程度あります。
このように、家庭部門や交通部門の省エネルギーの取組が求められるなか、燃料電池とその燃料としての水素の導入は、有効な省エネルギー対策と言えます。

【図 燃料電池のエネルギー効率】

図:燃料電池のエネルギー効率

出典:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構HP

2. エネルギー供給安定性の向上

海外情勢の不安定化など国際情勢の変化によって、エネルギー資源価格は敏感に反応します。エネルギーの自給率が特に低い日本は、こうした変化に対して強くなる必要があります。
水素は、さまざまな資源から作り出すことができ、世界情勢や資源の調達先の政治情勢の影響を受けにくく安定した供給が可能となります。
最近でも、中東情勢の変化によって原油価格、さらにはガソリン価格が大きく変動します。
これに対して水素エネルギーの場合は資源の価格変動に対して別資源による柔軟な対応ができるようになります。
水素は、現在では化石燃料(天然ガスやナフサ)から作られていますが、将来的には褐炭(低品位の石炭)や原油随伴ガス等の未利用エネルギーや、再生エネルギーから作られることが期待されています。さまざまな原料を用いることでリスクの少ない調達先を選択することができ、さらに国内の再生エネルギーから水素を製造できれば、日本全体のエネルギーの輸入量を減らすことも可能です。
またFCVに水素を充填しておけば、災害時の非常用電源として利用することも可能です。もし家庭への電気の供給がストップしてしまってもおよそ1週間分の電気を賄うことができます。さらに燃料電池バスを利用すれば、避難所として使用される体育館の照明に5日間電気を供給することができるとも言われています。FCVや燃料電池バスが「動く電源車」といわれるのもこのためです。

【図 水素の製造方法】

図:水素の製造方法

出典:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

【図 FCバスの「外部電源供給システム」及び「V2Hシステム」を使った電力供給のイメージ図】

図: FCバスの「外部電源供給システム」及び「V2Hシステム」を使った電力供給のイメージ図

出典:トヨタ自動車「トヨタ自動車、燃料電池バスの外部電源供給システムを開発」

【図 水素の様々な製造方法】

図:水素の様々な製造方法

出典:資源エネルギー庁作成

3. 環境負荷低減

水素は利用段階でCO2を排出しません。そのため水素製造時にCO2排出量を集中的且つ効率よく削減したり、再生可能エネルギーを利用したりすることで、環境負荷低減、さらには日本のCO2排出量削減に貢献します。
燃料電池車自動車のCO2排出量は水素製造源によって様々ですが、従来のガソリン車に比べて高い効率でエネルギーを消費するために低環境負荷です。

【図 二酸化炭素排出量(Well to Wheel)の比較】

図:二酸化炭素排出量(Well to Wheel)の比較

出典:財団法人日本自動車研究所「総合効率とGHG排出の分析報告書」

家庭で電気と熱を製造するエネファームの場合、石油や天然ガスなどの一次エネルギーの使用量を23%削減し、CO2も削減することができます。

【図 エネファームのCO2削減量】

図 エネファームのCO<sub>2</sub>削減量

出典:燃料電池普及促進協会(FCA)

水素の利用方法として燃料電池を用いた発電の他に、天然ガスと一緒に燃やすことで火力発電の効率を高めることも環境負荷を低減できます。この場合は火力発電時のCO2排出量の削減になります。また将来的に水素のみで発電することができればCO2フリーな発電方法になるため期待が寄せられています。水素発電が導入されることで水素の大規模な需要が生じるために、水素発電は水素価格低下のためにも期待されている分野です。水素価格が低下することで環境負荷の低い水素エネルギーとしての使用範囲がさらに広がり、大規模な環境負荷低減が見込まれます。
化石燃料から水素を製造する場合はCO2を排出しますが、このCO2を回収・貯留する技術も開発中です(CCS)。製造時のCO2排出を事実上フリー化するため、この方法で造られた水素はトータルでもCO2の排出がないと言えます。
また、水素を再生可能エネルギーから製造することで、これら水素利用のトータルなCO2排出をゼロにすることができます。風力発電や太陽光発電などで電気は変動を伴って出力されますが、水素に変換することで電気を安定供給することも可能になります。
また、水素を再生可能エネルギーから製造することも検討・実証されています。風力発電や太陽光発電などは天候の状態などで発電量が不安定に変動したり、またその揺らぎや電力需給のバランスが崩れる恐れがあるのでその発電したすべての電力を電力網に供給できないという問題があります。再生可能エネルギーで発電した電力を水電解で水素に変換しておけば、電力網に負担をかけることなく、いつでも必要な時に電気に戻したり、あるいはFCVの燃料に思料することができるようになります。

4. 産業振興・地域活性化

日本が強い競争力を持つ新産業分野であるため、産業の振興や地域の活性化に繋がります。世界的な市場規模は2050年で約160兆円になると予測されています。
日本国内だけでも、2030年過ぎには約1兆円を超え2050年には8兆円を超すと試算されていて、そのビジネスは広がりが期待されています。水素製造や水素ステーションなどのインフラ整備は新たな社会投資を生み出しますし、水素の利用によってCO2排出量が少ない、また災害にも強い新たなエネルギー社会が生まれる可能性があります。さらに日本の水素技術は世界最先端であり、燃料電池・水素関連の特許の数と質の高さは他国の追随を許さないと言われています。この先進性で世界の市場で日本の産業が大きなシェアを獲得できる可能性があります。
しかしすぐに黒字化できるビジネスではないため、開発企業は力を合わせて努力を続けています。既に述べてきた意義のある水素社会を構築するためには、様々な課題をクリアする必要があるからです。人々に安心して水素を使ってもらうためには安全技術の開発や法律の整備、さらに身近に使ってもらうためのコスト低減をしなければなりません。
将来の安心できる社会を構築するためにはみなさんで力を合わせて今から少しずつ変化していくことが重要なのです。

5. 実現に向けて

これらの水素エネルギーの利点を実現するには、そのような未来に対する共通のビジョンと、国や企業の意思が欠かせません。我が国では、経済産業省が水素社会の実現に向けたロードマップ(水素・燃料電池戦略ロードマップ)を2014年6月に策定しました。これによると、当初は化石エネルギーから水素を作るものの、2040年頃に向かって再生可能エネルギーから水素を製造したり、未利用エネルギー(褐炭、原油随伴ガス)を原料としつつ二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術も適用してCO2フリー水素を製造することなどが考えられており、上記に示した世界が実現できる予定です。

図:ロードマップ

出典:経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」

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