水素の意義とビジョン

海外各国での取り組み

アメリカの水素エネルギー利用への取り組み

写真:水素ステーション

カリフォルニア州ニューポートビーチで現在稼働中の水素ステーション。ガソリンスタンドに併設されている。(写真提供: CaFCP)

写真:水素ステーション

ドイツ ベルリンで現在稼働中の水素ステーション。ガソリンスタンドに併設されている。(写真提供: NOW-GmbH)

アメリカでは、ブッシュ大統領時代の2002年からFCVと水素エネルギーの実現に向けて政府が本格的な開発支援を行っています。米国での水素・燃料電池政策の中心的組織はエネルギー省(DOE)ですが、その他にも運輸省(DOT)や国防総省(DOD)も資金を投入してきました。
米国での水素エネルギー開発の大きな理由の一つがエネルギーセキュリティで、石油の脱他国依存の一環としてFCVの研究開発が行われてきました。その一方で、家庭用や業務用の燃料電池の研究開発は限定的なものにとどまりました。
米国50州のうちで最も熱心にFCV普及と水素ステーション整備に取り組んでいるのがカリフォルニア州です。カリフォルニア州では、自動車に対する二酸化炭素も含めた排ガス規制「ゼロエミッションビークル(ZEV)規制」を2009年から実施していることもあり、水素ステーションの建設などのインフラ整備にも積極的です。カリフォルニア州のブラウン知事は2013年9月にクリーン自動車の利用拡大を定めた州法に署名し、州内で100か所まで水素ステーションを整備するとし、このために毎年2000万ドル(24億円)を投じることを発表しました。2016年1月現在ではカリフォルニア州内で10か所のステーションがオープンしており、さらに建設中・計画中のステーションが35か所あります。
また、カリフォルニア州と東海岸地区の7州で、燃料電池自動車を含めたゼロエミッションビークル(ZEV)を合計330万台導入するという覚書もかわされており、これら各州が先頭となりアメリカでの燃料電池自動車の普及が進められつつあります。
このカリフォルニア州の水素ステーション整備の動きを全米に広げるために、2013年9月にはエネルギー省と自動車メーカー、燃料電池水素エネルギー協会による官民パートナーシップ「H2USA」が立ち上がりました。2015年までにロードマップを作成し、2020年までにはアメリカ全土に水素ステーションを建設する計画です。

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アメリカ政府の取り組み

アメリカ政府では、2002年にエネルギー省とアメリカの3大自動車メーカーとの間で水素燃料電池利用を推進する「フリーダムカーパートナーシップ」を締結し、燃料電池自動車の実用化にむけて開発予算を提供してきました。そして、2013年からは一部の州で燃料電池自動車の普及と水素ステーションの設置を全米に拡大するために、エネルギー省と自動車メーカー、燃料電池水素エネルギー協会による新たなパートナーシップ「H2USA」を立ち上げました。このH2USAにはアメリカ企業のほか、トヨタ、ホンダ、日産、ヒュンダイといった日本や韓国のメーカーも参画しています。現在のところ、H2USAでは、2015年までにロードマップを作成し、2020年までには米国全土にステーションを建設することを予定しているます。また、H2USAはニューヨーク州、マサチューセッツ州、コネチカット州、ロードアイランド州における水素ステーション整備検討に作業にも加わっています。

各州での取り組み

図:カリフォルニア州の水素ステーション

現在、CaFCPがカリフォルニア州で設置計画中の水素ステーションマップ。全部で100か所の整備が予定されている。

現在、アメリカ国内でもっとも水素利用が進んでいる州がカリフォルニア州で、すでに燃料電池自動車が約230台走行しているほか、全米で唯一水素ステーションの営業も行われています。同州では自動車メーカーに対して二酸化炭素を含めた排ガス規制「ゼロエミッションビークル(ZEV)規制」を2009年から導入しています。この規制は厳しいもので、自動車メーカーは電気自動車や燃料電池自動車など二酸化炭素を排出しないで走れる自動車(ZEV)を一定割合で販売することが義務づけられています。そのため、多くの自動車メーカーが同州向けとしてEVや燃料電池車の販売を計画しています。
同州内での水素ステーションの普及については、官民パートナーシップ組織であるカリフォルニア燃料電池パートナーシップ(CaFCP:CaliforniaFuel Cell Partnership)とカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC:California Energy Commission)、カリフォルニア州大気資源局(ARB:Air Resources Board)などが連携して進められています。2012年にCaFCPが発表した「カリフォルニアロードマップ」では、2016年初めまでに同州内で水素ステーションが68か所必要、2017~2018年には、燃料電池自動車の普及台数次第では合計で100か所近くのステーションが必要との予測しており、これを受け、ブラウン州知事が2013年9月にクリーン自動車の利用拡大を定めた州法が制定され、毎年2000万ドルを投じて州内で100か所まで水素ステーションを整備することを発表しています。2015年4月現在でカリフォルニア州内で8か所のステーションがオープンしており、さらに建設中・計画中のステーションが49か所あります。加えてトヨタ自動車とホンダは、カリフォルニアのエネルギー企業であるFirst Element Energyに個別に投資をし、それぞれが水素ステーションを19か所と12か所新設することを決めています。

カリフォルニア州での水素ステーションの普及見込み。2020年ごろには90か所程度が州内で整備され、2~3万台程度のFCVの普及を支えることができるようになると見込まれている。 [1]

カリフォルニア州以外ではまだ水素ステーションは本格導入されていませんが、2013年10月にカリフォルニア州と東海岸の7州(コネチカット州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州)で、「2025年までに計330万台のZEVを導入する」という覚書がかわされています。さらに、ハワイ州では自動車会社のGMと米国エネルギー省が国防省と連携して、燃料電池自動車の軍事活用とあわせ再生可能エネルギーで水素を生産するプロジェクトが実施されています。

ヨーロッパ各国の水素エネルギー利用への取り組み

ヨーロッパ各国のなかでは、ドイツがいち早く水素のエネルギー利用に向けた計画を進めています。同国では2004年からFCVと水素ステーションの実証プロジェクト「Clean Energy Project(CEP)」が開始されているほか、「水素・燃料電池技術革新プログラム(NIP)」が2007年より始まり、技術開発への政府からの資金投入が行われています。このCEPの枠組みで、2016年中に全国50か所の水素ステーションが設置されることになっています。
さらに、2009年にはFCVと水素ステーションの全国的な普及を目指したインフラ整備を検討する「H2 Mobility」が発足しました。H2 Mobilityは政府と自動車メーカー、エネルギー会社をメンバーとする官民一体のプロジェクトで、2016年以降の水素ステーションの展開を検討しています。このH2 Mobilityでは2023年までに400か所の水素ステーションを設置することを要望として発表しています。
また、ドイツが進めるH2 Mobilityをモデルとしてイギリスやフランス、デンマークなど他のヨーロッパ各国でもでも水素ステーションなどのインフラ整備計画が進められています。

図:ドイツの水素ステーション

ドイツでは、実証プロジェクトCEPの枠組みで2015年までに水素ステーション50か所を整備する予定[2]

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ドイツにおける取り組み

ヨーロッパ諸国のなかで、水素のエネルギー利用に早くから取り組んだのがドイツで、2004 年には燃料電池自動車と水素ステーションの実証プロジェクト「Clean Energy Partnership(CEP)」がスタートしています。CEPはDaimlerやBMW、VW、Linde といったドイツ企業に加えトヨタ、ホンダ、日産やGMやFordも参加したプロジェクトで、当初はベルリンで行われるFCV・水素ステーションの実証を行っていました。現在のCEPは、ベルリンのほかデュッセルドルフ、ハンブルグなどへも拡大し、CEPの枠組みで2015年までに50か所の水素ステーション整備を行うことになっています。
さらに2009年には2015年以降の水素インフラ整備を検討する組織「H2 Mobility」が結成されています。こちらも、CEPと同じくドイツ企業のほかに日本・アメリカの自動車メーカーも参加しており、2013年9月には、2017年までに100か所、2023年までに400か所の水素ステーションを設置するという目指という発表がAir Liquide、Daimler、Linde、OMV、Shell、Totalによってされている。

図:イギリスの水素ステーション

ドイツにおける2023年の水素ステーション展開見通し。大都市圏とそれをつなぐ高速道路を中心に400か所の整備が期待されている。[2]

ヨーロッパ各国の取り組み

ドイツ以外のヨーロッパ諸国でも、水素エネルギー利用への取り組みは進められていて、各国の事情にあわせた形でプロジェクトが進められています(表)。表のうち、イギリスで行われている「UK H2 Mobility」とデンマーク、オランダ、フランス、スウェーデンが4か国共同で行う「燃料電池水素共同実施機構」は、ドイツのH2 Mobilityを参考にした官民一体のプロジェクトです。また、ノルウェーで行われている「HyNor」は、同国では水力発電が盛んなことから、天然ガス等を使用せず水を電気分解して水素を取り出す方式を採用しています。

図:イギリスの水素ステーション

イギリスのUK H2 Mobilityが発表した2020年までの水素ステーション設置計画。2020年には国内に65か所の水素ステーションが必要と予測されている。[3]

【表 ヨーロッパ各国で進められている水素エネルギー利用プロジェクト】

イギリス UK H2 Mobility 2015~2020 年には65か所の水素ステーションを設置
デンマーク、オランダ、フランス、スウェーデン FCH JU 現在までに13か所の水素ステーションを設置
スウェーデン スカンジナビア水素ハイウェイ 将来的に10か所の水素ステーションを設置予定
ノルウェー HyNor 近い将来に16か所の水素ステーションを設置予定

韓国の水素利用への取り組み

ロサンゼルスでリース販売されている現代自動車のTucson ix Fuel Cell(写真提供: CaFCP)

韓国の現代自動車は、Tucson ix Fuel Cellのリース販売を、2014年6月から米国ロサンゼルス地域で開始しました。また欧州にもリース販売をしており、2015年までに1000台のFCVを量産しています。
韓国には現在12か所の水素ステーションが稼働しています。目標としては2015年中に43か所、2020年には168か所の設置が掲げられています。
韓国のPoscoは、米国のFuelCell Energyよりライセンスを受け、産業用の炭酸溶融塩型燃料電池(MCFC)の360MW級の製造プラントを平澤市に建設しています。

文献リスト

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