燃料電池自動車(FCV)

FCVとは

FCVは燃料電池を使った自動車

写真:MIRAIの構造

MIRAIの構造。車体の真ん中にあるのがFCスタックで、黄色い水素タンクにはさまれる形でリチウムイオン電池が搭載されています。車両前方(写真では左側)にあるのがパワーコントローラーとモーターです。
出典: 第43回東京モーターショーにて撮影(2013年11月)

写真:トヨタFC BUS

トヨタFC BUS(出典:トヨタ自動車)

写真:FCフォークリフト

FCフォークリフト(出典:豊田自動織機)

燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle)は、その名の通り燃料電池を利用した自動車です。燃料電池には、水素のほかメタノール、エタノールなども燃料に使うことが可能なものもありますが、現在市販されているFCVやこれから市販が予定されているFCVのほとんどが水素を燃料にしています。
FCVは燃料電池が作る電気を利用して走るため、エンジンの代わりにモーターが搭載されています。この点は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を利用する電気自動車(EV)と同じです。運転方法もハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作はこれまでの自動車と同じで、乗用車の場合は普通自動車運転免許を持っていれば運転できます。

また、FCVは一般的な乗用車だけではなく、バスのFCVも開発が予定されています。2005年に愛知県で開かれた「愛・地球博」では場内移動用に燃料電池バスに使われたほか、水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFCプロジェクト)の一環として成田空港や羽田空港のリムジンバスの一部にも燃料電池バスが導入されていました。2012年10月からは関西国際空港のターミナルビル間を結ぶシャトルバスとしても運用されています。
トヨタ自動車と日野自動車はFCV「MIRAI」の技術を利用した新型の燃料電池バスを2016年から販売するとしています。

またFCVの技術を活用して、FCフォークリフトも開発されています。特に倉庫や工場内での利用では排気ガスがでないモーター式のフォークリフトが好ましいですが、蓄電池式フォークリフトは充電に数時間かかるため、充填が数分で済むFCフォークリフトのニーズが高いと思われます。アメリカでは約6000台のFCフォークリフトが稼働中です。日本でも北九州水素タウンで豊田自動織機製のFCフォークリフト2台が実証試験されていたほか、関西国際空港の「KIXスマート愛ランド水素グリッドプロジェクト」では2014~2015年度にFCフォークリフトを2台導入し、その後本格導入を進めていく予定になっています。

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FCVと他の自動車との違い

ガソリン車やディーゼル車は、原油から精製されるガソリンや軽油(ディーゼル)を、エンジンで燃やして動力源にしています。小型の電池も搭載していますが、エンジンの着火やライトや車内のエアコン、オーディオなどの動作に使うだけです。ハイブリッド車(HV)では、エンジンに加えてやや大型の蓄電池と電気モーターを搭載しており、ブレーキの際にはエンジンブレーキの代わりにモーターが回転する力で発電した電力を充電し、走行時には逆に充電した電力でモーターを動かし、エンジンをアシストして、燃料消費を節約しています。
一方、FCVや電気自動車(EV)では最初からエンジンが搭載されず、電気モーターだけを動力源に走行します。FCVとEVの違いですが、FCVが燃料電池を使うのに対し、EVではニッケル水素電池やリチウムイオン電池のような二次電池を利用します。
なお、プラグインハイブリッド車(PHV)はEVとHVの中間的なもので、HVより大型の二次電池を搭載し、充電も可能となっています。

【図 ガソリン車とHV・PHV・FCV・EVの違い】

図:ガソリン車・ディーゼル車
図:HV
図:HPV
図:EV
図:FCV

FCVを利用するメリット

FCVが優れている一番のポイントは、走行時に排出するのは水蒸気のみというところです。窒素酸化物 (NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染につながる物質だけでなく、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素も排出しません。FCVがEVと並び環境にやさしい自動車とされるのはこのためです。
また、ガソリン車やディーゼル車のエンジンと比べ、FCVやEVの電気モーターが走行時に発生する音は極めて小さなものです。そのため、走行中は車体が風を切る音しかしないといってよいほどで、車内はとても静かです。車外に出す騒音も少ないので、この点でも環境にやさしいといえます。
さらに電気モーターを搭載するFCVやEVはガソリン車やディーゼル車と比べて加速性能が高いことも知られています。そのため、基本的な運転方法は変わらないものの、ガソリンやディーゼル自動車と違ったドライブフィーリングを楽しむことができます。

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水素利用のFCVだからこそ実現したクリーンな排出ガス

FCVの開発が盛んになった1990年代から2000年代初頭には、使用する燃料の有力な候補はメタノールやエタノールで、車で必要に応じて化学的に水素を発生させて利用するものでした。これを改質といますが、この車載での改質技術が困難であったこと、また水素を車載する技術が進歩したことにより、水素をタンクに車載して、直接的に燃料に利用するタイプのFCV開発が進むことになりました。

FCVが発進加速に優れている理由

FCVが発進加速に優れているのは、エンジンと電気モーターのトルク(タイヤを回す瞬発力)の特性が違うためです。トルクはエンジンであればクランクシャフト、モーターであればモーター軸にかかる回転力(モーメント)を表しています。トルクはエンジンやモーターの回転数により変わるため、その回転数とトルクの関係をグラフにしたものがトルク特性図で、この図のなかでトルクが大きい回転数の範囲が加速性能に優れていることになります。
図はガソリン車のホンダ・S2000のエンジンとFCVのホンダFCXクラリティのモーター、それぞれのトルク特性図です。エンジンは回転数が3000回転以上に上がると高いトルクを発生するものの、低い回転数では低くなります(1000回転以下の数字がないのは、この範囲ではトルク不足でエンジンが回転し続けることができないためです)。逆にモーターは低回転のときほど高いトルクで、回転数が上がるほど低くなります。このトルク特性の違いから、FCVはガソリン車と比べた場合、発進加速性能が優れているのです。

【図 ホンダ・S2000のエンジン(左)とFCVのホンダFCXクラリティのモーター(右)のトルク特性図】

図:ホンダ・S2000のエンジン トルク特性図
図:FCVのホンダFCXクラリティのモータートルク特性図
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