燃料電池自動車(FCV)

FCVの安全対策

FCVの安全性について

写真:MIRAI発表会で公開された、衝突試験の模様

MIRAI発表会で公開された、衝突試験の模様。時速80km/hの速度で正面衝突した際も、高圧水素タンクは変形しない設計になっている。(写真提供:トヨタ自動車株式会社)

FCVも他の自動車と同じように、万が一の事故に備えさまざまな安全性を考えて作られています。ここでは、FCV特有の水素利用に関する安全対策がどのように行われているかを取り上げます。
水素を安全に使うためには、

  • 水素を漏らさない
  • 水素が漏れた際には素早く検知
  • 漏れた水素は一か所に溜めない
といった対策が必要です。
FCVの水素タンクは長年の使用による劣化を考慮し、車両は衝突事故の衝撃などに配慮した設計や材料を使用する事で、水素の漏れを防いでいます。[2] また水素検知器が搭載されており、万一タンクや配管などからの水素漏れを検知した際にはすぐに配管のバルブを閉じる仕組みで、それ以上に水素が漏れないようにしています。さらに、FCVの水素タンクや配管は車室外に取り付けられており、水素が漏れ出た際にも車内に溜まることなくすばやく拡散されます。
また、水素ステーションでは、操作ミスなどでも水素が漏れないように、静電気防止などの安全対策がとられるほか、操作に慣れた専門のスタッフが充填作業を行うことになっています。(詳しくは水素ステーションの安全確保の仕組みをご覧ください)。
万一火災事故に巻き込まれた場合、周りの温度上昇に合わせて水素タンク内の圧力も上昇しますが、タンクには高温になると開く弁を取り付けてあり、水素を放出してタンクをほぼ空にする仕組みが採用されています。[3]

より詳しく知りたい

水素の特性を考えたFCVの安全対策

ガソリンと水素について、その燃え方の違いをまとめると表のようになります。ここから分かる通り、水素はガソリンに比べて火は付きやすく速く燃える一方で、素早く拡散するといえます。そこで、FCVではガソリン車とは異なる考え方での安全対策が必要となります。[1]
まず、安全対策の基本として外に漏らさないこと、周りに着火源となるものを置かない、という点では水素もガソリンも共通です。さらにFCVの場合は水素タンクへの充填や燃料電池へ水素を送る配管やバルブにはより高い漏れ対策が施された部品を使用します。また、水素漏れを検知するためのセンサーを搭載していることもFCVの特徴で、漏れを検知した場合に水素をストップするため、通常のバルブとは別にカットオフバルブと呼ばれる緊急停止専用のバルブを備え、漏れをいち早くストップする役割を果たしています。[2]
それでも万が一水素が漏れてしまった場合は、燃焼可能範囲の濃度にならないよう素早く拡散させる必要があります。しかし、大気中に放出された水素の拡散スピードはとても速く、遮るものがない場所でゆっくり放出する限りは燃焼可能範囲以下の濃度になります。トンネル内で急激な水素漏れ事故が起きた場合を想定した拡散実験も行われていますが、FCV乗用車1台に積んだ水素の約35%(1気圧の状態で42m^3分)が15.7秒で漏れてしまうケースでも、5秒後には燃焼可能範囲以下の濃度になることがわかっています。[3][4] この点は、液体のまま留まるために、事故で漏れた場合は出火を防ぐために取り除く作業が必要になるガソリンと根本的に違うところです。FCVの配管システムが必ず車体の外側に作られるのは水素の拡散速度が速いことを考えてのもので、FCVバスの多くで車体上部に水素タンクが設置されるのも、万が一の際に上に水素が逃げやすくするための工夫なのです。

【表 水素とガソリンの燃焼特性の違い】

水素 ガソリン ガソリンと比較した水素の特性
拡散係数
(空気中・1気圧・20℃)
0.61cm^2/s 0.05cm^2/s(ガス状態) 拡散しやすい
最小着火エネルギー 0.02mJ 0.24mJ 着火しやすい
燃焼範囲 4.1~75% 1.0~7.8% 燃焼範囲が広い
熱放射(輻射率ε) 0.04~0.25 0.3~0.4 熱放射による被害や類焼が少ない
最大燃焼速度 346cm/s 42cm/s 爆風圧が大きい

水素とガソリンの燃焼特性の違い(石本祐樹(2008)「エネルギー総合工学研究所における水素拡散、燃焼基礎物性の研究について」p.2を元に作成) [1]

文献リスト

  • [1] 石本祐樹(2008)「エネルギー総合工学研究所における水素拡散、燃焼基礎物性の研究について」エネルギー総合工学研究所, p.2
    http://www.f-suiso.jp/bunkakai/H20bunka1-2.pdf
  • [2] 野間恒毅(2014)「「水素の危険性と安全対策」トヨタFCV開発者インタビューvol.3
    http://nge.jp/2014/09/04/post-2889
    [3][2]pp.9-12
  • [4] 新エネルギー・産業技術総合開発機構(2014)『NEDO 水素エネルギー白書 2014』p.74
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