燃料電池自動車(FCV)

燃料電池とは

電池とは

燃料電池の説明に入る前に、まず電池について簡単その仕組みを紹介いたします。
電池は化学反応がおきる際に発生する電気を取り出すようにしたもので、利用する化学物質の酸化反応と還元反応の組み合わせによりさまざまな種類の電池が作られています。テレビのリモコンなどで使うマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池、携帯電話やカメラで利用されるリチウムイオン電池、自動車のバッテリーとして搭載されている鉛蓄電池などです(太陽電池など化学反応を利用しない電池もありますがここでは省略します)。
電池には使い切りタイプの一次電池と、充電することにより繰り返し使用可能な二次電池(蓄電池)の2種類があります。マンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池は一次電池、リチウムイオン電池や鉛蓄電池は二次電池にあたります。そして、FCVに搭載される燃料電池はこれら一次電池や二次電池と違う特徴をもった電池なのです。

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さまざまな電池

世界で最初に電池の実験を発明したのはイタリア人科学者のボルタで、1800年のことでした。その際には亜鉛板と銅板の間に硫酸水溶液で浸した布をはさみ、亜鉛と銅の性質の差を利用して発生する電気を取り出しています。
ボルタの発明後数十年で多くの材料を使った電池が作られました。現在は、二次電池ではニッケル水素電池やリチウムイオン電池が主流となっています。

【表 現在使われている主な電池の種類】

電極(※) 電解質(※) 充電可能
マンガン乾電池 亜鉛、二酸化マンガン 塩化アンモニウム ×
アルカリマンガン乾電池 亜鉛、二酸化マンガン 水酸化カリウム ×
リチウム一次電池 リチウム、二酸化マンガン 有機電解液 ×
マグネシウム空気電池 マグネシウム、酸素(大気) ×
鉛蓄電池 鉛、二酸化鉛 硫酸
ニカド電池 塩基性酸化ニッケル、カドミウム 水酸化ナトリウム
ニッケル水素電池 塩基性酸化ニッケル、水素吸蔵合金 水酸化カリウム
リチウムイオン電池 リチウム金属化合物、炭素(グラファイト) 有機電解質など

※電極、電解質の材料は代表的なもので、性能向上のため同様の性質の化合物が使われたり、さまざまな添加物が追加されることも多い。

充電ができる二次電池

使い切りタイプの電池は一次電池と呼ばれ、充電することで繰り返し使用できる電池は二次電池と呼ばれています。二次電池の歴史も古く、19世紀後半には最も古い鉛蓄電池が実用化されています。鉛蓄電池は、電極に鉛と二酸化鉛を硫酸水に浸した構造になっていて、電気を取り出すとそれぞれ硫酸鉛に変化します。しかし、逆方向に電気を流すと硫酸鉛がそれぞれ鉛と二酸化鉛に戻る化学反応が起きるため、この充電作業を行うことで再び使えるようになるのです。
二次電池は、鉛蓄電池のほか塩基性酸化ニッケルとカドミウムを使ったニカド電池が古くから実用化されています。一方、20世紀終わり頃に我が国で水素吸蔵合金を使ったニッケル水素電池、リチウムイオン電池などコンパクトで大電力が取り出せる電池が開発され、普及が進んでいます。一方で、鉛蓄電池は大型化することが簡単なため、自動車のバッテリーだけでなく工場の予備電源などでも活用されています。

燃料電池とは

燃料電池とは燃料と酸化剤を外部から供給しつつ反応させて電気を取り出すタイプの電池のことを指します。多くの場合、酸化剤には酸素(空気)が用いられますが、そこでは物質が燃えるときと同じように酸素との化学反応を利用するため「燃料電池(英語ではfuel cell)」という名前が付けられています。燃料電池で酸素と反応させる燃料として原理的にはさまざまな物質が利用可能ですが、現在のところ水素・メタノール・ヒドラジンを使うタイプが実用化されています。
燃料電池は充電ができませんが、充電の代わりに燃料を追加し続けることで長い時間連続して電気を取り出すことが可能です。そこで、使い切りの一次電池とは別のものとして分類されることが多くなっています。
燃料電池の利用範囲は広く、古くはアポロ計画などの宇宙船で電力源として使われたほか、現在ではFCVのほか家庭用燃料電池またはコージェネレーションシステム「エネファーム」、携帯電話の充電システムなどにも活用されています。

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燃料電池の歴史は100年以上

写真:アポロ計画

人類が初めて月に到達したアポロ11号にも燃料電池が使われていた。(写真提供:アメリカ航空宇宙局)

燃料電池の仕組みにはいくつかあり、現在までに実用化や研究が進んでいるのは表の4種類です(表)。 このうち、FCVに利用されている燃料電池は固体高分子形燃料電池(PEFC)で、水素と空気がそれぞれ通る層がある電極の間に、イオン交換膜(電解質層)を挟み込んだ形になっており、これをセルと呼びます(図)。燃料として入ってきた水素はまず電極表面にある触媒によって水素イオン(H+)と電子に分かれ、電子は電極へ、水素イオンはイオン交換膜へと移動していきます。イオン交換膜はプラス電荷またはマイナス電荷のイオンだけを通すように作られた特殊な高分子膜で、PEFCではプラス電荷の水素イオンが通りやすい高分子が使われています。高分子膜を移動して反対側の電極に到達した水素イオンは、触媒の働きにより空気中の酸素と反応し、水となります。セル1個が発生する電流の電圧は運転時は約0.7Vになります。FCVで利用する場合は大電力が必要となるためセルは何段にも積み重ねられ(FCスタック)、より高い電圧の電力を取り出しています。
FCVがPEFCを利用するのは動作温度が80~90℃程度と低いためで、暖める時間が短くて済み、発進・停止を繰り返す自動車向きといえます。その代わりに反応を起こす触媒として高価な白金が必要で、このことが実用化を難しくしていました。しかし、自動車メーカーと化学メーカーの共同研究が進み、自動車1台あたりに使用する白金の量を大幅に減らすことに成功し、大量生産できるレベルまで価格が下がってきました。またより安価な材料を触媒として使う研究も進められています。
逆に、より高い温度で動作する固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、暖める時間がかかるものの燃料の利用効率が高いほか、高温の排熱を熱源としてさらに使えるメリットがあり、長時間連続して使用する大規模発電向けに開発が進められています。

FCVが利用するのは固体高分子形燃料電池

写真:FCスタック

FCVに搭載される燃料電池は、燃料電池のセルを何段にも積み重ねて高電圧を取り出す「FCスタック」と呼ばれる仕組みになっている。(写真提供: トヨタ自動車株式会社)

燃料電池の仕組みにはいくつかあり、現在までに実用化や研究が進んでいるのは表の4種類です(表)。 このうち、FCVに利用されている燃料電池は固体高分子形燃料電池(PEFC)で、水素と空気がそれぞれ通る層の間に、反応を起こすための触媒層が、電解質が移動するイオン交換膜(電解質層)を挟み込んだ形になっています(図)。燃料として入ってきた水素はまず触媒によって水素イオンと電子に分解し電子は電極へ、水素イオンはイオン交換膜へと移動していきます。イオン交換膜はプラス電荷のイオンだけ、あるいはマイナス電荷のイオンだけを通すように作られた特殊な高分子膜で、PEFCではプラス電荷の水素イオンが通りやすい高分子が使われています。高分子膜を移動しきった水素イオンは、触媒の働きにより空気中の酸素と反応し、水となります。この1セットのことをセルといい、セル1個が発生する電圧は作動時に約0.7Vになります。FCVで利用する場合は大電力が必要となるためセルは何段にも積み重ねられ(FCスタック)、より高い電圧の電力を取り出しています。
FCVがPEFCを利用するのは動作温度が低いためで、暖める時間が短くて済み、発進・停止を繰り返す自動車向きといえます。その代わりに反応を起こす触媒として高価な白金が必要で、このことが実用化を難しくしていました。しかし、自動車メーカーと化学メーカーの共同研究が進み、自動車1台あたりに使用する白金の量を大幅に減らすことに成功。大量生産できるレベルまで価格が下がってきました。また、脱白金に向けた白金より安価な材料を触媒として使う燃料電池の研究も進められています。
逆に、より高い温度で動作する固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、暖める時間がかかるものの燃料の利用効率が高いほか、高温の排熱を熱源としてさらに使えるメリットがあり、長時間連続して使用する大規模発電向けに開発が進められています。

【表 一般的な燃料電池の仕組み】

固体高分子形
(PEFC)
リン酸形
(PAFC)
溶融炭酸塩形
(MCFC)
固体酸化物形
(SOFC)
燃料 水素 水素 水素・一酸化炭素 水素・一酸化炭素
電解質 イオン交換膜 リン酸 溶融炭酸塩 ジルコニア系セラミックス
動作温度 常温~90℃ 150~200℃ 650~700℃ 750~1000℃

【図 固体高分子形燃料電池で電気を取り出す仕組み】

図:固体高分子形燃料電池図
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