FCVとは
FCVは燃料電池を使った自動車
2020年12月に発売された第二世代MIRAI:2020年3月10日の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)の開所式で安倍総理大臣が運転(出典:NEDO)
都バスとして使用されているFCバス「SOLA」(出典:東京都交通局)
FCフォークリフト(出典:豊田自動織機)
燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle)は、その名の通り燃料電池を利用した自動車です。燃料電池には、水素のほかメタノール、エタノールなども燃料に使うことが可能なものもありますが、現在市販されているFCVやこれから市販が予定されているFCVのほとんどが水素を燃料にしています。
FCVは燃料電池が作る電気を利用して走るため、エンジンの代わりにモーターが搭載されています。この点は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を利用する電気自動車(EV)と同じです。運転方法もハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作はこれまでの自動車と同じで、乗用車の場合は普通自動車運転免許を持っていれば運転できます。
また、FCVは一般的な乗用車だけではなく、路線バス用の燃料電池バスも開発され、実際の営業路線での運用が始まっています。
トヨタ自動車はFCV「MIRAI」の技術を利用した新型の燃料電池バス「SORA」を2016年から販売開始しました。東京都交通局をはじめとして2021年3月までに約100台が導入されています。
またFCVの技術を活用して、FCフォークリフトも開発されています。倉庫や工場内での利用では排気ガスがでないモーター式のフォークリフトが好ましいですが、蓄電池式フォークリフトは充電に数時間かかるため、充填が数分で済むFCフォークリフトのニーズが高いと思われます。アメリカでは約30,000台のFCフォークリフトが普及しています(2020年4月)。日本では豊田自動織機製がFCフォークリフトを販売し、300台を超える普及が始まっています。
より詳しく知りたい
FCVと他の自動車との違い
ガソリン車やディーゼル車は、原油から精製されるガソリンや軽油(ディーゼル)を、エンジンで燃やして動力源にしています。小型の電池も搭載していますが、エンジンの始動・着火やライト、車内のエアコン、オーディオなどの動作に使うだけです。ハイブリッド車(HV)では、エンジンに加えてやや大型の蓄電池と電気モーターを搭載しており、ブレーキの際にはエンジンブレーキの代わりにモーターが回転する力で発電した電力を充電し、走行時には逆に充電した電力でモーターを動かし、エンジンをアシストして、燃料消費を節約しています。
一方、FCVや電気自動車(EV)では最初からエンジンが搭載されず、電気モーターだけを動力源に走行します。FCVとEVの違いですが、FCVが燃料電池を使うのに対し、EVではニッケル水素電池やリチウムイオン電池のような二次電池を利用します。
なお、プラグインハイブリッド車(PHV)はEVとHVの中間的なもので、HVより大型の二次電池を搭載し、充電も可能となっています。
【図 ガソリン車とHV・PHV・FCV・EVの違い】
FCVを利用するメリット
FCVが優れている一番のポイントは、走行時に排出するのは水蒸気のみというところです。窒素酸化物 (NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染につながる物質だけでなく、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素も排出しません。FCVがEVと並び環境にやさしい自動車とされるのはこのためです。
また、ガソリン車やディーゼル車のエンジンと比べ、FCVやEVの電気モーターが走行時に発生する音は極めて小さなものです。そのため、車内はとても静かです。車外に出す騒音も少ないので、この点でも環境にやさしいといえます。
さらに電気モーターを搭載するFCVやEVはガソリン車やディーゼル車と比べて加速性能が高いことも知られています。そのため、基本的な運転方法は変わらないものの、ガソリンやディーゼル自動車と違ったドライブフィーリングを楽しむことができます。