水素は多様な方法でCO2削減に貢献すると期待されています。ここでは水素社会のビジョンや、日本と世界の取り組みをご紹介します。
水素の意義
日本で大きく使われ始めた水素エネルギー。それが普及するとどんな未来が待っているのでしょうか。

水素の意義は以下のようにまとめられます。
- 省エネ
水素から電気を取り出す燃料電池は高効率であり、大幅な省エネルギーにつながります - エネルギー供給安定性の向上
水素はさまざまな資源から作れるため、日本の安定的なエネルギー供給に貢献します - 環境負荷低減
水素は利用段階でCO2を排出しないほか、水素製造を集中・効率化したり再生可能エネルギーを利用したりすることで環境保全に貢献できます - 産業振興
日本が強い競争力を持つ新産業分野であるため、産業の振興に繋がります
水素社会のビジョン
水素エネルギーを普及させるには、未来に対する共通のビジョンや、将来の自動車社会に対する共通の理解が必要です。

- 日本は世界に先駆けて、国家レベルの水素戦略となる「水素基本戦略」を2017年に決定しました。その後世界では、欧州連合、ドイツ、フランス、オランダ、ノルウェー、韓国、カナダ、チリ、オーストラリアなどの約60の国が水素戦略を策定しています
- FCVと電気自動車(EV)は対立するものではなく、将来の自動車社会の中で共存、あるいは用途によってすみわけていくと考えられています
日本の取り組み
日本は世界各国のなかでも水素利用について熱心な国の一つです。日本の国や自治体等が推進しているさまざまな施策を紹介します。

- 水素エネルギーは、日本が進めるクリーンエネルギーへの転換(グリーントランスフォーメーション)の柱のひとつとして認識されています
- 国は2017年12月に、世界に先駆けて水素社会を実現するための「水素基本戦略」を決定し、2023年6月には改訂版が発表され、2030年、2040年、2050年の一連の普及目標が設定されました
- 2021年6月に発表された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」でも、水素はアンモニアとともに14の重要分野の一つに選ばれており、「水素は、発電・輸送・産業等、幅広い分野で活用が期待されるカーボンニュートラルのキーテクノロジー」と期待されています
- 2024年5月には「水素社会推進法」が成立し、10月に施行されました。2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、水素をはじめとする「低炭素水素等」の活用を促進するのが目的です
- 水素エネルギーは日本の「エネルギー基本計画」でも重要なエネルギーと位置付けられています。2025年2月に発表された第7次エネルギー基本計画では「幅広い分野(鉄鋼、化学、モビリティ分野、産業熱、発電等)での活用が期待される、2050年カーボンニュートラル実現に向けた鍵となるエネルギー」と位置付けられています
世界の取り組み
水素利用に熱心に取り組んでいる世界のさまざまな政策を紹介します。

- 欧州連合は、看板政策であるグリーンディールの重要政策に水素を位置付けており、2020年7月に水素戦略を策定しました
- ドイツは、2020年6月に水素戦略を策定、水電解による水素展開を掲げました。2023年7月に改訂され、この分野でドイツがリーダーシップをとっていくことを強調しています
- 韓国は2022年に3アップ戦略(規模のScale-Up、インフラ・制度のBuild-Up、産業・技術のLevel-Up)を発表、クリーン水素サプライチェーン構築と水素産業育成で世界1位を目指すとしています
- 2017年1月に、日本企業を含む世界企業が集まり、水素利用を推進するための国際組織「Hydrogen Council」が設立されました。当初は13社の集まりでしたが、現在は140社に拡大しています