水素の意義とビジョン

海外各国での取り組み

アメリカの水素エネルギー利用への取り組み

写真:水素ステーション

カリフォルニア州ニューポートビーチで現在稼働中の水素ステーション。ガソリンスタンドに併設されている。(写真提供: CaFCP)

写真:水素ステーション

ドイツ ベルリンで現在稼働中の水素ステーション。ガソリンスタンドに併設されている。(写真提供: NOW-GmbH)

米国での水素エネルギー開発の大きな理由の一つがエネルギーセキュリティで、石油の脱他国依存の一環として日本と同様に2000年頃からFCVの研究開発が行われてきました。
米国50州のうちで最も熱心にFCV普及と水素ステーション整備に取り組んでいるのがカリフォルニア州です。カリフォルニア州では、自動車に対する二酸化炭素も含めた排ガス規制「ゼロエミッションビークル(ZEV)規制」を2009年から実施していることもあり、水素ステーションの建設などのインフラ整備にも積極的です。カリフォルニア州のブラウン知事は2013年9月にクリーン自動車の利用拡大を定めた州法に署名し、州内で100か所まで水素ステーションを整備するとし、このために毎年2000万ドル(24億円)を投じることを発表しました。2020年4月現在ではカリフォルニア州内で41か所のステーションがオープンしており、2030年までに1000か所が整備される予定です。
なお、カリフォルニア州の助成を得て設置される水素ステーションは、33%に相当する水素供給量を再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオマス等)由来とすることが定められています。

世界の国際的企業が水素利用推進のための国際組織を設立

2017年1月に、世界の政治・経済のリーダーが集まる世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)にて、世界的な企業によって「Hydrogen Council(水素協議会)」が設立されました。
この協議会は、水素を利用した新エネルギー移行に向けた共同のビジョンと長期的な目標を提唱するためのグローバル・イニシアチブ(活動体)とされています。
協議会の参加企業は、水素と燃料電池の開発と商業化にむけ大掛かりな投資を、更に加速させていくとしています。

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アメリカ各州での取り組み

図:カリフォルニア州の水素ステーション

現在、CaFCPがカリフォルニア州で設置計画中の水素ステーションマップ。全部で100か所の整備が予定されている。

現在、アメリカ国内でもっとも水素利用が進んでいる州がカリフォルニア州で、すでに燃料電池自動車が約8300台走行しているほか、全米で唯一商用水素ステーション(retail)の営業も行われています。同州では自動車メーカーに対して二酸化炭素を含めた排ガス規制「ゼロエミッションビークル(ZEV)規制」を2009年から導入しています。この規制は厳しいもので、自動車メーカーは電気自動車や燃料電池自動車など二酸化炭素を排出しないで走れる自動車(ZEV)を一定割合で販売することが義務づけられています。そのため、多くの自動車メーカーが同州向けとしてEVや燃料電池車の販売を計画しています。
同州内での水素ステーションの普及については、官民パートナーシップ組織であるカリフォルニア燃料電池パートナーシップ(CaFCP:CaliforniaFuel Cell Partnership)とカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC:California Energy Commission)、カリフォルニア州大気資源局(ARB:Air Resources Board)などが連携して進められています。2012年にCaFCPが発表した「カリフォルニアロードマップ」では、2016年初めまでに同州内で水素ステーションが68か所必要、2017~2018年には、燃料電池自動車の普及台数次第では合計で100か所近くのステーションが必要との予測しており、これを受け、ブラウン州知事が2013年9月にクリーン自動車の利用拡大を定めた州法が制定され、毎年2000万ドルを投じて州内で100か所まで水素ステーションを整備することを発表しています。2020年4月現在でカリフォルニア州内で41か所のステーションがオープンしています。
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ヨーロッパ各国の水素エネルギー利用への取り組み

ヨーロッパ各国のなかでは、ドイツがいち早く水素のエネルギー利用に向けた計画を進めています。同国では2004年からFCVと水素ステーションの実証プロジェクト「Clean Energy Project(CEP)」が開始されているほか、「水素・燃料電池技術革新プログラム(NIP)」が2007年より始まり、技術開発への政府からの資金投入が行われています。
さらに、2009年にはFCVと水素ステーションの全国的な普及を目指したインフラ整備を検討する「H2 Mobility」が発足しました。H2 Mobilityは政府と自動車メーカー、エネルギー会社をメンバーとする官民一体のプロジェクトで、2016年以降の水素ステーションの展開を進めています。このH2 Mobilityでは2023年までに400か所の水素ステーションを設置することを目指しており、これまでに82ヶ所の水素ステーションが開設されてきています。
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また、ドイツが進めるH2 Mobilityをモデルとしてイギリスやフランス、デンマークなど他のヨーロッパ各国でもでも水素ステーションなどのインフラ整備計画が進められています。
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ドイツにおける取り組み

ヨーロッパ諸国のなかで、水素のエネルギー利用に早くから取り組んだのがドイツで、2004 年には燃料電池自動車と水素ステーションの実証プロジェクト「Clean Energy Partnership(CEP)」がスタートしています。CEPはDaimlerやBMW、VW、Linde といったドイツ企業に加えトヨタ、ホンダ、日産やGMやFordも参加したプロジェクトで、当初はベルリンで行われるFCV・水素ステーションの実証を行っていました。現在のCEPは、ベルリンのほかデュッセルドルフ、ハンブルグなどへも拡大し、CEPの枠組みで水素ステーション整備が進められてきました。
さらに2009年には2015年以降の水素インフラ整備を検討する組織「H2 Mobility」が結成されています。こちらも、CEPと同じくドイツ企業のほかに日本・アメリカの自動車メーカーも参加しており、2025年までに400か所の水素ステーションを設置するという目標が掲げられています。

韓国の水素利用への取り組み

韓国は、韓国版H2 Mobilityである「HyNET」を2019年3月に設立し、官民挙げて水素ステーション整備を進めています。2019年末で24か所が開所していますが、2020年末までに100か所以上の整備を目指しています。普及目標は、2022年に310か所、2040年に1200か所です。
また韓国は2019年1月に「水素政策ロードマップ」を、2019年10月には「水素R&Dロードマップ」を発表、官民を挙げて水素を普及させる方針です。
韓国の水素ステーションマップはこちら

文献リスト

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