水素の意義とビジョン

日本の取り組み

日本の水素エネルギー・燃料電池利用への取り組み

日本では、水素エネルギーの利用について1980年代から経済産業省で研究開発がスタートしました。

またFCVと水素ステーションの実証研究として、2002年度から水素・燃料電池実証プロジェクト(Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project、略称「JHFCプロジェクト」)が実施され、実用化のための課題の洗い出しなどを行ってきました。
2011年1月には、日本の主要メーカー13社(トヨタ自動車(株)、日産自動車(株)、本田技研工業(株)、JX日鉱日石エネルギー(株)、出光興産(株)、岩谷産業(株)、大阪ガス(株)、コスモ石油(株)、西部ガス(株)、昭和シェル石油(株)、大陽日酸(株)、東京ガス(株)、東邦ガス(株))が共同で「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表し、2015年にFCVを市場導入すること、また水素ステーションを2017年度中に四大都市圏を中心に100カ所程度を整備するという目標を発表しました。
国も民間の意向を尊重し、また水素ステーション整備目標に向かって、補助金を設定して支援してきました。このような官民を挙げての支援のなか、2014年12月にトヨタ自動車が世界最初の量産型FCV「MIRAI」を販売いたしました。また国だけでなく自治体もFCVの率先導入やFCV・水素ステーションに対する補助金を設定し、普及を後押ししています。
定置用燃料電池に関してはNEDOの「定置用燃料電池大規模実証事業」が2005~2009年に実施され、各社が参加してデモンストレーションを実施し、実用化の課題を洗いだしました。その成果を基に、家庭用燃料電池システム「エネファーム」が、2009年に世界に先駆けて一般販売されています。
販売開始当初は「エネファーム」も1台300万円程度と高額でしたが、政府の補助金支援等により10年間で30万台を超える普及が進展し、量産効果もあり、現在は100万円を切るまでになってきました。コスト競争力がついたエネファームメーカーは、中核のFCシステムを輸出し、欧州メーカーが発電給湯システムとして製品化し欧州でも普及が始まっています。補助金によって市場拡大と製品のコストダウン、さらに技術の国際的な産業競争力が向上した産業政策の好例といわれており、FCVや水素ステーションでも同じような効果が期待されます。

こうした水素利用さらなる拡大を目指し、2018年7月に政府が発表した「エネルギー基本計画」では、“水素社会”の実現に向けた取組の抜本強化”として、以下の6つの政策が示されています。

  1. 燃料電池を活用した省エネルギーの推進
  2. モビリティにおける水素利用の加速
  3. 低コストの水素利用実現に向けた国際的な水素サプライチェーンの構築と水素発電の導入
  4. 再生可能エネルギー由来水素の利用拡大に向けた技術開発の推進と地域資源を活用した地方創生
  5. 2020年東京五輪での“水素社会”のショーケース化
  6. グローバルな水素利活用の実現に向けた国際連携強化

このうち、燃料電池自動車(FCV)へ水素を供給するための「水素ステーション」については2018年度までに100か所がオープンし、さらに普及が拡大しています。

▲ パナソニック製

▲ アイシン精機製

家庭用燃料電池「エネファーム」
(写真: 経済産業省「ようこそ!水素社会へ ~ 水素・燃料電池政策について」より作成)

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日本が政府として水素エネルギー技術に本格的に取り組みをスタートさせたのは1980年のことです。当時は二度のオイルショックにより原油の価格が上がり、石油に代わる新しいエネルギー源の研究開発の必要性が強く求められていた時期で、政府は1980年にそのための研究機関としてNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)を設置し、風力・太陽光と並び水素エネルギー技術の技術研究を続けてきました。
通商産業省(当時)とNEDOは、1993年度~2002年度に、世界の未利用再生可能エネルギーを水素に変換して輸送・貯蔵するプロジェクト「水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術研究開発」(WE-NET)を実施しました。現在の水素サプライチェーンの先駆けとなる研究です。 2002年度からは、FCVと水素ステーションの実証研究として、水素・燃料電池実証プロジェクト(Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project、略称「JHFCプロジェクト」)が実施され、開発中のFCVや多様な水素ステーションの実証試験をとおして実用化のための課題の洗い出しなどを行ってきました。このJHFCプロジェクトは、2011年度からは第三期がはじまりましたが、FCV実用化が見通せる段階に到達した2013年度で終了し、水素ステーションの先行整備のための支援制度に移行してきました。

WE-NET以降も、NEDOは「水素安全利用等基盤技術開発」(2003~2007年度)、「水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発」(2008~2012年度)、水素利用技術研究開発事業(2013~2017年度)を実施し、FCVと水素インフラの実用化のための技術開発を支援してきました。現在NEDOは、水素社会構築技術開発事業(2014年度~2020年度)、水素利用等先導研究開発事業(2014~2022年度)、超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業(2018~2022年度)を実施し、水素の製造から輸送・利用に至る広範な技術の高度化や低コスト化を推し進めています。またNEDOは定期的に燃料電池・水素技術開発のロードマップを発表しています。さらに水素エネルギー技術への理解を促進するために、2014年7月には日本で初めての「水素エネルギー白書」を発表しています。

FCV実用化に向けては、もちろん民間でも積極的な展開が行われました。2011年1月には、日本の主要メーカー13社(トヨタ自動車(株)、日産自動車(株)、本田技研工業(株)、JX日鉱日石エネルギー(株)、出光興産(株)、岩谷産業(株)、大阪ガス(株)、コスモ石油(株)、西部ガス(株)、昭和シェル石油(株)、大陽日酸(株)、東京ガス(株)、東邦ガス(株))が共同で「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明」を発表し、2015年にFCVを市場導入すること、また水素ステーションを四大都市圏を中心に100カ所程度を整備するという目標を発表し、その実現に向けた取組を進めています。
国も民間の取り組みを推進のためFCVの普及支援のための購入補助金や、水素ステーション整備目標に向かって建設や運営に対する補助金制度を設定して支援しています。(水素ステーションに関する補助金は一般社団法人次世代自動車振興センターを通じて交付されています)

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